『ミッキーの芝居見物』でドナルド・ダックが初登場
1934年8月11日に公開された『ミッキーの芝居見物(Orphan’s Benefit)』は、初めて「ドナルド・ダック(Donald Duck)」が登場した作品。
実際は「ドナルド・ダック」はこの作品以前に、同年6月9日に公開されたシリー・シンフォニーシリーズの『かしこいメンドリ(The Wise Little Hen)』でスクリーンデビューを果たしているので、正確には”ミッキーとの共演が初”となる作品である。
この作品の邦題は『ミッキーの芝居見物』となっているが、原題は ”Orphan’s Benefit” なので「孤児の恩恵」となるはず。
だが『ミッキーの子だくさん』と同様、ここでも邦題では「孤児」の文字は使用されていない。
この作品は『ミッキーの子だくさん』を作成した監督と同じバート・ジレットが監督している。
作品内容は原題の通りで、小さな劇場でミッキーたちがネズミの孤児たちのための慈善公演を開催する話となっている。
このころのミッキーアニメは「孤児」を題材にしたものが多いのは、世界恐慌の影響で25%という高い失業率と多くのホームレスや孤児たちが生れていた、当時のアメリカの時代背景によるものが大きい。
この時登場するドナルドダックは、顔は今より一回り小顔だが、すでにドナルドが怒った時のお馴染みの「飛び跳ね」「拳を振り回す」などのスタイルが表現されている、考え抜かれて作られてであろう完成度の高さが凄い。
他にも初登場のメンバー「クララ・クラック (Clara Cluck) 」がいる。
彼女はあまり出番がないが、現在もたまに登場する名脇役。
1941年に公開された『ミッキーの芝居見物』のテクニカラーリメイク版
この『ミッキーの芝居見物』には同題名、同内容でリメイク版が存在する。
1941年8月22日に公開され、音声クリップの旧作の物が採用されたが最後のドナルドのセリフだけが「Aw, nuts!」から「Aw, phooey!」に変更された。
In 1941, Walt Disney Animation Studios remade their animated short film from 1934 called Orphan's Benefit. It's interesting to look at both of the shorts back to back as you can see how much their animation and characters evolved in seven years. pic.twitter.com/sGKAtoleSu
— Animated Antic (@Animated_Antic) June 10, 2019
ドナルドダックの声を51年間演じ続けた「クラレンス・ナッシュ」
ドナルドダックのデビュー作『かしこいメンドリ』から120本以上の作品で51年間もの間「ドナルド・ダック」の声を担当したのは、「クラレンス・チャールズ・ナッシュ(Clarence Charles Nash)」であった。
彼はドナルドダックの他にも、ドナルドの甥である「ヒューイ」「デューイ」「ルーイ」の声や、初期の「デイジーダック」の声も演じていた。
ナッシュは1970年代後半になると、カリフォルニア州グレンデールのフリーモント小学校周辺をよく散歩し、ドナルドダックの声で子供たちを楽しませていた。
70歳を過ぎると喉に負担がかかり、レコーディング中は頻繁に休憩を取り、水をたくさん飲んでいた。
彼の担当した最後の映画は1983年の『ミッキーのクリスマス・キャロル(Mickey’s Christmas Carol)』で、1985年2月20日、白血病のため80歳で死去。
妻マーガレット・ナッシュと共有されている彼の墓石には、ドナルドダックとデイジーダックが手をつなぐ彫刻が施されている。
クラレンス・ナッシュの死後のドナルドダックの声引き継いだ「トニー・アンセルモ」
クラレンス・ナッシュの死後のドナルドダックの声は、生前親交があり病床のナッシュが直々に「後を頼む」と役を託した「トニー・アンセルモ」により演じられ、彼もナッシュに劣らず2016年まで31年間もの間、「ドナルドダック」を演じつ続けた。
ナッシュが健在だった頃、アニメーターであったトニーは、しばしばナッシュの前でドナルドダックの声真似を披露しており、モノマネにたいしてアドバイスを出していた。
なお、ドナルドダックの声は”地声”ではなく作った声であり、ドナルドの声を引き継いだトニー・アンセルモのこのようなエピソードがある。
トニーは「ドナルドの特徴的な怒鳴り声は相当の労力を要すものだ」と語っており、あまりの辛さにトニーのアニメーターとしての師であるジャック・ハンナに「ダッキー(クラレンス・ナッシュ)はこんな大変なことを楽にこなしていたっていうの?」と聞いた。
「クラレンス・ナッシュ」
それに対しジャックは「とんでもない、それどころかたまに気絶していたさ」と答えている。
それを聞いてトニーは少し安心したという。
ドナルドダックの声を披露する若き日のクラレンス・ナッシュ
Clarence Nash best remembered as the original voice of the Disney cartoon character Donald Duck who first voiced "the duck" in the 1934 Silly Symphony, The Wise Little Hen. The duck became Donald, and for a while he was more popular than Mickey Mouse.
— Game of X (@froggyups) March 4, 2024
Anselmo was trained and… pic.twitter.com/TIVtZ4zvhV
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