人類歴史の大きな一歩を記した映画『蒸気船ウィリー』

1928年(昭和3年)11月18日、ディズニー映画の記念すべき第一作が公開された。
題名は『蒸気船ウィリー』。

ディズニー歴史の始まりは『蒸気船ウィリー』

『蒸気船ウィリー』は原題:Steamboat Willieといい、当時の最先端技術を用いたトーキー映画(音声付き映画)でした。

ウォルトは蒸気船ウィリー以前に、実写とアニメを合成させた映画やサイレントのアニメーション映画をいくつも作っているが、トーキー映画でのアニメーションはこれが初となった(正確にはサウンドトラック方式のアニメーションが世界初)。

1900年代初期の映画は、しばらくサイレントが主流でしたが、サイレントの映像に別録りした音声を同期させた作品が生まれ「トーキー」と名付けられた。
トーキーの初期は映画フィルムとは別にレコード盤を回して音声を出していたため、同期が難しく、また録音や再生技術の問題で音質も良くありませんでした。
しかし、磁気テープなどに録音された音声をフィルム上に録音する技術を持った「サウンドカメラ」の発明により、1923年にニューヨークで初めて映像と音が完全同期した短編映画が公開された。
1928年には、音声システムにサウンドトラック方式(映像とは別の音声用トラックを用いてセリフ・音楽・BGMを録音し再生されるもの)が採用され、映画の音響面の大幅な技術開発が行われました。これにより、映画の臨場感は大幅に向上し、娯楽作品としての完成度をさらに高めていったのです。

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当初、他の多くの映画と同様「蒸気船ウィリー」もサイレント映画として進められていたが、前年の1927年に世界初のトーキー映画『ジャズ・シンガー』が公開され、それに刺激されたウォルトは 「蒸気船ウィリー」をトーキー映画として作り直し公開された。
結果、映像と音声を完璧にシンクロさせた手法が評判となり大ヒットとなるが、これは当時、ディズニー社のは若いアニメーターであったウィルフレッド・ジャクソンの功績が大きかった。

当時は無声映画の時代でしたが、ウォルトは音楽とアニメーションを融合させるというアイデアを持っていました。
スタジオのアニメーション部門に新しく着任したウィルフレッドは、メトロノームを使ってアニメーションを音楽と同期させる方法を考案しました。メトロノームは音楽トラックに変換できます。
この革新はミッキーマウスのデビュー作『蒸気船ウィリー』で取り上げられ、エンターテイメントのメディアに革命をもたらし、他社競合スタジオはディズニー社の制作の秘密を解明しようと1年以上を費やしました。

「Walt Disney Archives」のディズニーレジェンドより https://d23.com/walt-disney-legend/wilfred-jackson/

この作品の上映後、ウォルトディズニー「観客は皆、衝撃を受けました。彼らは音と動きの融合にほとんど本能的に反応しました。」と言い、ウォルトと共にミッキーを生み出したウォルトの盟友アブアイワークス「人生でこれほど興奮したことはない。それ以来、これに匹敵するものはない」と後に語っている。

1928年11月18日にアメリカ・ニューヨークのコロニー劇場で公開された『蒸気船ウィリー』は、人類歴史に影響を与えたと言っても過言ではない「ディズニーの歴史の始まり」でした。

因みにこの映画は『Gang War』という長編映画の前座で上映された作品だが『Gang War』はその後忘れ去られてしまった。

なお、日本国内初公開のミッキー作品は『蒸気船ウィリー』でなく『ミッキーマウスのオペラ見物(The Opry House)』で、公開日は1929年9月12日(もしくは27日)に新宿武蔵野館で公開されたと考えられており、『蒸気船ウィリー』の日本公開は翌年の1930年5月19日でした。

ミッキーの原点であり、ディズニーの原点が凝縮された作品

この作品の中でミッキーは暴君ピート船長の下で働く蒸気船の甲板員として登場。
7分半の短い映像だが、これを見ると現在までディズニー映画にその雰囲気が継承されてきたのがよくわかる。

この時のミッキーの声を含めたすべての声はウォルトディズニーが自ら担当し、この後も一部作品を除き1947年までミッキーの声はウォルト・ディズニー自身が担当。
ミッキーマウスはウォルトの分身のような存在となっていく。

『蒸気船ウィリー』のあらすじ

貨物蒸気船の船上で展開されるこの物語は、ミッキーが甲板上で当時のヒット曲「Steamboat Bill」を上機嫌に口笛しながら貨物船を操縦しているところに、ピート船長がやってくるところから始まる。
貨物船を勝手に操縦していた一船員のミッキーはピートにひどく怒られ蹴り飛ばされる。
その後、港に着いた船は、牛(クララベル)や七面鳥などを積み込むが、ミニーは遅れてやってきたために船に乗り遅れてしまう。
ミッキーは船のクレーンを使ってミニーを船に乗せることに成功するが、ミニーが持っていた楽譜と楽器を山羊に食べられてしまう。
そうすると不思議なことに、山羊がオルゴールのようにフォークダンスの曲「Turkey in the Straw」を発するようになる。
それを面白がってミッキーとミニーや動物たちが、悪ふざけしながら演奏し楽しんでいたら、再び船長ピートがやってきて怒られ...
ノーカット版『蒸気船ウィリー』(Steamboat Willie)

通常の「蒸気船ウィリー」には、上記動画5:58からのミッキーが母豚をアコーディオンのように弾くシーンがカットされているが、このYoutube と『ディズニープラス』『セレブレーション! ミッキーマウス』では見ることができる。

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