軍隊生活をするドナルドダックの作品 その1

ディズニーは第二次大戦中、多くのプロパガンダ映画、または戦争関連の映画を多数制作している(参照)。
その中には、アメリカ政府(またはカナダ政府)の依頼を受けて作成した映画もあるが、ディズニーが自主的、積極的に制作した作品も多く、その代表的なものがドナルドダックが陸軍で軍隊生活を送る6作品で、4番目の作品と最後の6番目の作品には登場しないが、その他の4作品にピートが教官または軍曹として登場するところも物語を面白くしている重要なポイント

また、6つの物語は連続性があり、ドナルドが召集令状を受け取り自ら進んで陸軍への入隊を志願するところからはじまり、最後の6作品目はパラシュートで東南アジアと思われるジャングルに落下し、日本軍基地を破壊して終了となる。

アメリカ政府のプロパガンダに積極的に協力したディズニーであったが、自主的に制作された作品は、あくまで娯楽作品であって、戦争や軍隊生活を奨励するような内容にはなっていない。
それでも最後の作品はプロパガンダ色がかなり強いが、それを除けばドナルドの感情豊かで共感を呼ぶ親しみ深いキャラとどんなピンチも最後は切り抜けてしまうタフな一面が、”軍隊”という環境によくマッチしていて、さらにピートを教官または軍曹としたところに最高の面白さがある。
戦争という背景が無ければ作品として非常に優れた作品だと思う。
今回はそのはじめの3作品を紹介します。

『ドナルドの入隊(Donald Gets Drafted)』1942年5月1日公開作品

ドナルドの入隊(Donald Gets Drafted)
あらすじ(ドナルドが軍隊生活を送る連続した6作品のはじめの作品)

ドナルドは、召集令状を受け取った後、意欲にあふれて地元の徴兵局へ向かう。
そこには、兵士たちを魅力的に描いた募集ポスターを何枚か見かけ、美しい女性に挟まれて歩く兵士の姿も。
ポスターに目を奪われたドナルドは、兵士を自分に置き換えて妄想。
早速徴兵検査を受けて軍隊生活が始まるも、基礎訓練中ミスを連発、訓練教官のピートに直立不動の姿勢を取るよう命令するが、足元の蟻の巣から蟻たちが次々と這い上がって来て、我慢できなくなったドナルドは、今度は誤ってライフルを発砲大惨事。
最後はひたすらジャガイモの皮むきをさせられるドナルドであった。

憧れて入った軍隊だが、現実は厳しく、結局ジャガイモの皮むきからスタートするドナルドの軍隊生活というギャップが面白い。

この作品は、約500本のドナルドダック関連のストーリーを制作した「グッドダックアーティスト」と言われたカール・バークス(Carl Barks)がストーリーを描いている。
彼はアメリカの戦争関与に反対する平和主義者で、彼曰く、この作品は徴兵局のポスターで示される華やかな姿とドナルドが軍隊生活で直面する現実との違いを明確にする意図があった。

この米軍の帽子を被ったドナルドのタイトルカードが特徴的。

ドナルドの入隊(Donald Gets Drafted)

この作品のタイトルカードから冒頭1分半ぐらいにかけて歌われている曲は“The Army’s Not the Army Anymore”(陸軍はもう陸軍ではない)で、カール・バークスとディズニーの著名な作曲家リー・ハーライン(Leigh Harline)によって、この作品のために書かれた。

The Army’s Not the Army Anymore

The Army’s not the Army anymore
It’s better than it’s ever been before
The bugler blows, I can’t get ‘em up
At quarter after seven
But if you’re tired, stay right there
Sleep until eleven
Oh, the Army’s not the Army anymore
The Army’s not the Army anymore
It’s better than it’s every been before
You used to walk a mile for beans
But now they bring them to ya
And all the Generals say “hello”
As though they really knew ya
Oh, the Army’s not the Army anymore
They’ve got a lot of hostesses
The gals are really cuties
And entertaining these co-eds
Is part of your regular duties
Oh, the Army’s not the Army anymore
The Army’s not the Army anymore
It’s better than it’s ever been before
The Seargent isn’t tough anymore
He’s careful not to bore you
Just tell him when you’re peelin’ spuds
And he will peel them for you
Oh, the Army’s not the Army anymore
No, the Army’s not the Army anymore

https://scrooge-mcduck.fandom.com/wiki/The_Army%27s_Not_the_Army_Anymore
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陸軍はもう陸軍じゃない
前より良くなった
ラッパが鳴っても、起き上がれない
7時15分
でも疲れてるならそのままで
11時まで寝ろ
ああ、陸軍はもう陸軍じゃない
陸軍はもう陸軍じゃない
前より良くなった
昔は豆を買うために1マイルも歩いた
でも今は彼らが持ってきてくれる
将軍たちはみんな「こんにちは」と言う
まるで本当に知り合いみたいに
ああ、陸軍はもう陸軍じゃない
ホステスがたくさんいる
女の子たちは本当にかわいい
そして女子学生をもてなすのが
あなたの通常の仕事の一部
ああ、陸軍はもう陸軍じゃない
陸軍はもう陸軍じゃない
前より良くなった
軍曹はもうタフじゃない
退屈させないように気を遣っている
あなたが疲れているときは彼に伝えればいいジャガイモ
そして彼が皮をむいてくれます
ああ、軍隊はもう軍隊じゃない
いや、軍隊はもう軍隊じゃない

『ドナルドの透明人間(The Vanishing Private)』1942年9月25日公開作品

ドナルドの透明人間(The Vanishing Private)
あらすじ(ドナルドが軍隊生活を送る連続した6作品の2作目)

派手なペイントを大砲にしてしまったドナルドは上官のピート軍曹に怒られ、見えにくくするために塗り直しを命じられる。
命令に従い、ドナルドは「迷彩部隊」まで歩いて行き、そこで「立ち入り禁止」の標識を無視して中に入るとそこには ”見えないペンキ” があった。
ドナルドはペンキを持ち出し、大砲に塗装。
大砲は完全に見えなくなってしまった。
ピートはドナルドを叱責したが、ピートがドナルドを吹っ飛ばした拍子にドナルドがペンキのバケツに入ってしまう。
見えなくなってしまったドナルドはピートをからかい出すが、怒り狂ったピートが手榴弾を持ち出して大惨事に。
最後は上官に精神に問題があると疑われ独房に入れられるピートであった。

この作品の冒頭ではドナルドダック(声優クラレンス・ナッシュ)が上記作品で紹介した曲 “The Army’s Not the Army Anymore”(陸軍はもう陸軍ではない)を歌っている。

ドラえもんを思わせる画期的な発明品”透明ペンキ”。
ピートをからかうドナルドと見えないドナルドに翻弄されるピート、そのピートを見ながら戸惑う上官。
最後はピートが悪者になってしまう理不尽さに笑える作品。

『ドナルドのパイロット (Sky Trooper)』1942年11月6日公開作品

ドナルドのパイロット (Sky Trooper)
あらすじ(ドナルドが軍隊生活を送る連続した6作品の3作目)

空軍の訓練基地でジャガイモの皮むきに明け暮れるドナルドは「空を飛びたいあ・・・。」と溜め息を吐いていた。
それを聞いていた上官のピートの計らいで、ドナルドは平衡感覚のテストを受けるがすべて失敗。
しかしドナルドは、飛ぶ機会が与えられ浮かれて飛行機に同乗するも、実はパラシュート部隊ではあった。
騙されたドナルドは恐怖のあまり降下を拒否するが、それを許さないピートとの格闘が空中で展開する。
誤って爆弾と共に落下してしまった二人は軍の司令部に落下してしまう...

ここでもまだ大量のジャガイモの皮むきをさせられているかわいそうなドナルド。
ピートにもいいところがあると思いきやパラシュート部隊に。
無慈悲な対応と怯えるドナルドの姿が面白い。

ドナルドのパイロット (Sky Trooper)

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